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grad(u)ation



テキスト:有富裕一

イラスト:阿部隆太


卒業を意味するグラデュエーションと連続的な変化を意味するグラデーション。

アルファベット上だと「u」が有るか無いかの違い。


学校を卒業する場合、中学を例に挙げると、1年2年3年で卒業となり、グラデーションのイメージとはほど遠い、2.99年など小数点以下の年次があるとグラデーション感はでてくる。


しかし、欲を言うとグラデーションというのは白と黒の絵具が混ざる途中のように、数値では表現できないものと感じているので、グラデーション感のあるグラデュエーションはやはり難しいと思う。


学校のように年次で卒業が決まっている場合は、社会のシステムに則った卒業であるが、会社のように自分で辞めますと言わなければクビか倒産にならない限り続けられる場合はどうだろうか。


退職を卒業と言い換えることができるのを前提として、「あぁ、今日辞表出したい。でもまだ出せない。でも出してしまいたい」という揺れに揺れた感情はかなりグラデーションである。精神的には退職してしまっているが、物理的には在籍している。精神的には死んでいるが、物理的には活動している。ほぼゾンビの様相を呈している。


しかしながら、ゾンビから社会人に戻る人間もいる。ワクチンのようにモチベーションを与えられたり、給料が上がったり、休暇を取ったり。


そんな人間もまた時間の経過や突発的な出来事でゾンビに戻る。そしてまた社会人に戻る。

卒業の話をしていたが、ゾンビと社会人の話になってきた。


ゾンビになりつつある社会人は何度も見てきた。そして、ゾンビになってしまうと卒業の方法がわからなくなってしまう。ゾンビだから。


社会人に戻りつつあるゾンビを見分けることは難しい。ゾンビは表情で分かるが、元ゾンビの社会人とゾンビ未経験の社会人の違いがパッと見て判別できない。


ただ、ゾンビから社会人に戻ったゾンビは、ゾンビと違い、卒業の方法がわかる。社会人だから。

なので誰かの辞職を聞くたびに「あの人は元ゾンビだったんだ」と思う。


1.ゾンビ未経験社会人 2.ゾンビ 3.元ゾンビ社会人をグラデーションのように経て、人によっては2と3のグラデーションを繰り返して、最後にグラデュエーションをしたのである。


会社の卒業の寄せ書きに「お疲れ様でした」と書かれていることが度々見受けられる。

それは1.2.3.のグラデーションへの労いの言葉である。


世界中の元ゾンビたちよ、本当にお疲れ様でした。


私は来週休暇を頂きます。





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