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暮らしのラフ方角



テキスト:有富裕一

イラスト:阿部隆太


私は鎌倉で生まれ育ち、中野区に1年程度住み、現在は大田区で暮らしている。

方角でいうと鎌倉から北東に移動し、1年後にその位置から少し南東に下った形になる。

実家に帰る時は南西への移動となる。


そうやって住む場所が変わっていくなかで「おおまかな方角」というのが気になるようになった。


例えば自宅から外出する時に、この時間に駅に向かうとあの道の信号機の影はこっちの方向に落ちている、など。確認して正解だと嬉しい。


以前、友人に「足を向けて寝られない」と伝えた。


その日帰りながら友人宅の場所と実際に自分が寝ている時に足を向けている方角の位置関係を確認した。ちゃんと足を向けて寝ていなかった。よかった。


また、「夕飯は居酒屋にしよう」と妻から伝えられた時に思わず手を合わせて拝んでいたことがあった。居酒屋が好きなので素直に「ありがたい」という気持ちを表したのだと思う。


その夜寝る前に、今日行った居酒屋の位置と手を合わせた方角を思い出していた。

結果的ではあるがその居酒屋は手を合わせた方角にあった。

居酒屋に「今日の夜お世話になります」という意図が伝わっていたら嬉しい。


この文章をパソコンで書いている今は、右ひじが東、左ひじが西、椅子に座り90度に曲げたひざは北を、かかとは南を指している。


私がトイレに行けば、私という人間が南に移動したことになる。そのトイレの便器の位置上、用を足す時は北を向くことになる。


小便は北へ、大便は南に出る。


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