数えられない同心円



1つの点があり、その点を中心にして2つ以上の円を描くと「同心円」という言葉が思い浮かぶ。

その同心円が2つ以上あり、それぞれの円の直径が異なればその同心円の数を数えることができる。


同心円が5つあり、それぞれの直径が異なれば5つの円を目視で数えられるということ。

数字がある分だけ同心円ができる。無量大数の同心円。それ以上の同心円。


ただ、その同心円の直径が全く同じであれば数えることはできない。そこに無量大数の円があっても1つの円。1つの円にしか見えないが、そこに同心円がある。


コンパスを持って円を1つ描く、そのまま10回ぐるぐるすれば10の同心円ができる。ぐるぐるした本人しかそこに10の同心円があることを知らない。他の人が見ても10あるとわからない。


その10回ぐるぐるした同心円は1〜2分あればできる。この円をAとする。

その隣にもう1つ円を描く。その場で10回ぐるぐるせず、1年に1回誕生日にぐるっとする。10年経つとAと同じ見た目の同心円ができる。この円をBとする。


AもBも本人からすれば同心円の数を数えることができるし、AとBそれぞれへの思い入れも違うだろう。自分ならBへの思い入れの方が強い。


他の人からしたらAとBは同じ1つの円。直径も同じなので同心円とすら認識されない。


「AもBも同じ円」と言われると寂しい気持ちになる。

でもそれはしょうがない。見た目が全く同じだから。


「AとBは何か違うんですか?」と描いた本人に訊いてみれば説明してくれるだろう。

Bに対する思い入れを。


その思い入れを聞いて「AもBも同じ円」ともう一度言える人はいない。

音として口から出せたとしても、もう同じ感情で言うことはできない。


イラスト:阿部隆太

最近の文章