庭のゴツン



実家は家庭菜園をしている。主なラインナップはゴーヤ・ナス・キュウリ・トマト・里芋。

長女の義父(以下:義父)が鎌倉の七里ガ浜で畑を耕しており、その指南を私の両親が受けて始めたものである。


耕運機まで購入し本格的になっている。そのエンジンをかける際は、紐を勢いよく引っ張らなければならない。一度かけてみたことがあるがとても難しい。全くエンジンがかからない。

母はそれを使い続けており慣れたものだ。


1ヶ月に1回のペースで義父が私の父に電話で最近の家庭菜園の様子を聞いていた。

様子を聞いた後に、実際に我が家に訪問し両親と庭を見つつ、その経験を伝授していた。


庭のゴツンがあったのはそんな義父の訪問の日であった。

義父の指南を受け、母は新しく開墾する庭の端のスペースの草むしりをしていた。

義父もその手伝いをしており、母のスタート地点の反対方向から草むしりをはじめていた。お互いに作業に集中していたため真っ正面から頭同士がぶつかった。庭のゴツン。

映画やアニメでみる恐竜の喧嘩さながらのキツイ一発である。


私は庭に面している洋間の窓からその様子を眺めていた。窓ごしでも聞こえてきたその大きな音は低く鈍かった。


青空の下、70歳を過ぎた男女が頭頂部を抑えてお互いに謝りながら土に片膝を着いて苦悶していた。


結局、その草むしりをしたスペースは花壇になっている。


イラスト:阿部隆太

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